研究課題
本研究の目的は、他の研究班が観測的に明らかにしたエアロゾルの物理、化学、光学的特性が、気候影響という視点からどの程度の影響を持つものなのかを定量的に評価することにある。最終年度である今年度は、他班からのデータ等が出そろったため、それらを用いての気候影響計算等を実施した。テーマ的には次の4つに分類される。1)発生源データの将来予測値を用いたエアロゾル濃度計算結果に基づき、2000年と2021年について、東アジア地域における放射強制力の変化を求めた。その結果、2000年には上海を中心とした硫酸牲エアロゾル高濃度領域に対応してこの地域周辺でエアロゾルによる大気冷却効果が卓越するが、2021年には北京から朝鮮半島北部にかけてのブラックカーボンの増加の効果などが顕著となると同時に、硫酸性エアロゾルの高濃度域も北に移動するため、中国北部で強い冷却、南部ではほぼ冷却(加熱)がゼロという地域性が顕著になるという予測結果となった。2)同地域におけるエアロゾル量のモデル計算値と人工衛星による観測値に2〜3倍の違いがあるため、それらを組み合わせ、より最もらしい濃度データを得るためのデータ同化手法を検討した。3)地上におけるエアロゾルの光学特性観測データを用いて大気大循環モデル中で用いられている放射計算パラメータの最適化を行う方法を検討した。結果の一例として、単散乱アルベドの観測値を参考にエアロゾルの屈折率を変更した場合、放射強制力は既存計算値の数10%以上の大きさの変動を伴うことが分かり、さらなる観測データの蓄積が必要であることが示された。4)立坑実験により新たに得られたエアロゾル数密度と雲粒数密度の関係式を大気大循環モデルに導入し、これまでの式との違いを評価した。結果は、エアロゾル高濃度域で雲粒数の減少を引き起こし、結果としてより大気を暖める方向に計算結果を導くものであった。
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IRS 2004 Proceedings 'Current Problems in Atmospheric Radiation', Deepak, 148
ページ: 203-206