温暖化評価のための地球規模エアロゾル分布の推定

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14048211
• 研究機関: 豊橋技術科学大学
• 研究代表者: 北田 敏廣 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40093231)
• 研究分担者: 山本 浩平 京都大学, 大学院・エネルギー科学研究科, 助手 (10263154) ; 倉田 学児 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (90283506)
• キーワード: 全球モデル / 炭素含有エアロゾル粒子 / 元素状炭素粒子 / 有機炭素粒子 / 浮遊粒子状物質 / 大気汚染輸送 / 東アジア / TRACE-P観測

研究概要

本研究は、人為、自然の種々のソースを持つエアロゾルの全球分布を予測するモデルの開発を目的としている。特に、東アジアのエアロゾル大気環境を全球的な影響の中で捕らえることが目的である。本年度は、モデル検証のために、昨年度開発の炭素含有粒子の全球排出源分布、土壌粒子の排出機構等を用いて2001年2-4月にかけておこなわれたTRACE-P観測の期間に合わせて全球の化学輸送計算と仮想的な粒子群の輸送計算を行った。粒子群の計算は、黄砂粒子の排出源、中国沿岸部の排出源を想定して、広がりを持ったこれらの排出地帯通過の気塊が流れ場のシアーによりどのように変形されるかを1週間にわたりトレースした。化学輸送計算では、上海、北京での3月1ヶ月間の地上観測(SO2,NOx,TSP)およびTRACE-P航空機観測の結果と比較した。その結果、上海、北京での地上観測との比較ではエアロゾル粒子の場合、観測と計算土壌粒子を含めることにより計算濃度レベルは、かなり観測値に近づいた。計算による内訳では、黄砂のイベント時には土壌成分が粒子濃度全体の8-9割を占める。いくつかの時点で計算値と観測値に乖離があるが、計算結果の検討より、土壌粒子の過小評価、あるいは過大評価、人為起源粒子の過小評価に起因すると推定された。モデルの格子長が2.5度と粗いこと、したがって強い人為排出源の近くでは計算値が観測値にくらべて小さくなることが一因と考えられる。TRACE-P航空機観測との比較では、オゾン、HNO3は良く一致している。BCについては過小評価、SO4についても若干の過小評価であるが位相は一致しており、2-3月期に合わせたBCの適切な排出源強度分布の設定が課題である。以上、開発中のエアロゾル全球輸送/反応/沈着モデルの精度を検討した。定性的には満足できる結果であった。排出源精度の向上等が課題である。

研究成果

• [文献書誌] Kitada, T., Regmi, R.P.: "Dynamics of air pollution transport in late wintertime over Kathmandu valley, Nepal : As revealed with numerical simulation"Journal of Applied Meteorology. Vol.42. 1770-1798 (2003)
• [文献書誌] Regmi, R.P., Kitada, T.: "Human-air pollution exposure map of the Kathmandu valley, Nepal : Assessment based on chemical transport simulation"Journal of Global Environment Engineering. Vol.9. 89-109 (2003)
• [文献書誌] Tokairin, T., Kitada, T.: "Numerical investigation of the effect of road structures on ambient air quality : For their better design"Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics. Vol.92. 85-116 (2004)
• [文献書誌] Carmichael, G.R., Tang, Y., Kurata, G., et al.: "Regional-Scale Chemical Transport Modeling in Support of Intensive Field Experiments : Overview and Analysis of the TRACE-P Observations"Journal of Geophysical Research. 108. No.2002JD003117 (2003)
• [文献書誌] Carmichael, G.R., Tang, Y., Kurata, G., et al.: "Evaluating Regional Emission Estimates Using The TRACE-P Observations"Journal of Geophysical Research. 108. No.2002JD003116 (2003)
• [文献書誌] Yamamoto, K., Kasahara, M., Kitada, T., Kurata, K.: "New approaches for development of emission inventories of soil dust for transport models"IUGG2003. MCO1/03P/D-15 (2003)