研究課題
特定領域研究
エアロゾル粒子の、地球の温暖化への定量的影響については大きな不確定性がある。その一つの原因は、エアロゾル粒子の粒径・組成・混合状態の違いによる、(1)太陽放射に対する"直接効果"の違い、(2)凝結核としての作用(能力)の違いに基づく雲生成の違い(放射に対する"間接効果")にある。本研究は、上記の研究の基礎とするため、人為、自然の各種の排出源のこれらのエアロゾルの組成に対する寄与を、東アジアを主対象に、全球スケールの中で明らかにすることを目的とした。2001年2-4月にかけておこなわれたTRACE-P観測の期間に合わせて全球の化学輸送計算を行い全球エアロゾルモデルのパフォーマンスを検討した。北京、上海、ウルムチ、ラサ、西安、昆明、アモイ、ハルビンなど中国国内の多数の地上観測点でのTSP濃度および東京、大阪でのPM10濃度と計算エアロゾル濃度を比較検討した。また、計算によるエアロゾル組成推定も行った。さらに、炭素含有エアロゾル粒子について、有機炭素粒子と元素状炭素粒子に分け、化石燃料燃焼、バイオマス火災、植生起源等の全球排出源の調査を行い、2001年IPCCレポートに述べられている情報と比較した。また、黄砂等の土壌粒子フラックスおよびそれによる排出量分布についても検討を行った。開発したモデル計算値と観測値の比較を行い、現状の格子長(2.5x2.5度)の下での全球モデルとしては、ほぼ妥当な結果と考えられ、特に東京、大阪についてはモデル計算値と観測の一致は良好であった。この両地点の場合、計算格子内にいずれも100点を越える観測点があり、これらの平均値との比較であったが、このことから観測値の格子代表性もモデル計算値との比較の上で重要なファクターと考えられる。今後、土壌粒子の粒径別発生比率の見直し、海洋起源粒子の導入が課題である。
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