研究概要 |
湿性沈着は最も重要な大気の浄化過程である。化石燃料の燃焼等により大気中に排出された酸性物質により,雲や雨は酸性化し,酸性雨問題を引き起こす。本研究では,霧の生成や降雨時にエアロゾルやガス状汚染物質を取り込むレインアウト機構,ウォッシュアウト機構について研究するとともに,アジア地域における酸性物質沈着量を推定することを目的とし,具体的には,以下のような研究課題について研究を進めている。 1)霧粒や雨滴などの液滴粒子の個別計測・分析が可能な形での捕集・計測法について検討した。個別液滴粒子捕集法としては凍結法,高分子吸水剤法,コロジオン膜法などを開発,分析にはMicroーPIXE法,大型放射光SPring-8を利用した超微量分析法の確立を進めている。 2)霧粒や雨滴の粒径と化学成分濃度,また洗浄される側であるエアロゾルの粒径別化学成分濃度,ガス濃度を同時に測定し,粒径を加味した化学成分毎の化学収支をとることにより,霧粒や雨滴への汚染物質の移動量,霧粒や雨滴中でのエアロゾルの溶解性などを調べた。実験には高度差のある六甲山頂・山麓を利用した。 3)上記測定データを解析し,レインアウト機構,ウォッシュアウト機構について検討するとともに,現象のモデル化を行い,湿性沈着のミクロモデルによるシミュレーションを進めている。 4)東アジア酸性雨モニタリングネットワーク及び日本の酸性雨モニタリングネットワークで過去に測定された大量のデータを利用し,東アジアにおける酸性沈着量やその季節的変動特性・地域特性などを解析した。 5)釜石鉱山の立坑(高度差430m)を利用して雲の発生実験を行い,レインアウト機構について検討した。
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