日本海に面した能登半島の山岳斜面に、標高が異なる4箇所の観測点を水平距離5km程度の範囲内でほぼ直線状に配置し、大気微量成分の湿性沈着量を同時に測定した。これにより、黄砂や大気汚染物質に代表される大陸域から日本列島や太平洋上へ長距離輸送される物質の沈着量、すなわち大気からの除去量を、標高と関連づけて評価することを新たに試みた。降水量は一般に、標高が高くなるにつれて増加する傾向が見られ、霧水の沈着による「降水」の寄与が示された。その一方、標高が低い地点で降水量が多くなる事例も見られ、ここでは沿岸収束による降水雲の形成と強化が示唆された。各成分の沈着量については、9月末の一降水における事例では、Cl^-は標高が高いほど減少したのに対し、SO_4^<2->では逆に多くなっていた。また、NO_3^-は標高によらずほぼ一定であった。その原因として、NO_3^-は大気中に存在した量が殆ど除去されたのに対して、SO_4^<2->は全量が除去されるには至らず、そのため、標高の増加に伴う降水量の増加に対応して相対的には一定の洗浄係数により沈着量も多くなったことが推測される。また、Cl^-については、標高に加えて海岸からの距離も強く影響しているものと思われる。このほか、通常は大規模なものが春季に見られる黄砂現象が、今回は11月から12月にかけても見られ、気象官署における目視観測による報告が無い場合も含めて、その発現時にはCa^<2+>の沈着量が多くなっていた。
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