研究概要 |
前年度から引き続いて、日本海に面した能登半島の山岳斜面で標高が異なる4箇所の観測点における降水を「ひと雨」ごとに採取し、溶存成分の濃度を測定した。これにより、黄砂や大気汚染物質など大陸域から日本列島や太平洋上へ長距離輸送される物質をはじめとする大気微量成分の湿性沈着量を標高と関連づけて評価した。降水量は、総観規模における降水システムの如何に拘らず、標高が高くなるにつれて増加する傾向が見られた。各成分の濃度や沈着量については、事例どうしではその全量や降水量が大きく異なっていても、標高に対する依存性としては似た傾向が窺えた。その一方で、成分によってこの傾向は異なっており、これらの量が降水量のみに依存するのではなく、更に他の要因によっても支配されていることが示された。濃度については、多くの成分で標高が高くなるにつれて低くなっており、その度合いは海塩成分(Na^+,Cr^-)で大きかった。沈着量については、NH_4^+やNO_3^-では沈着量が標高によらず殆んど一定であり、濃度は標高による降水量の増加に伴う希釈で低下していた。一方、nss-SO_4^<2->の沈着量は標高が高くなるにつれて多くなる傾向を示した。NH_4^+やNO_3^-でみられた傾向は、大気から供給され得る量が全て降水粒子へ取り込まれたことで説明できるが、nss-SO_4^<2->に関しては、大気からの供給量が他の成分に比べて多いために洗浄し尽くされていない可能性が考えられる。
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