本研究では、日本各地の地上サイトおよび船上でのリモートセンシングおよび現場観測により東アジアにおける対流圏エアロゾルの光学特性を調べ、直接効果による気候影響を評価することを目的としている。本研究の最終年度としての取りまとめを行い、次のような研究成果を得た。 1.小笠原・父島での長期連続地上観測(2002.9〜2005.6)により、エアロゾルの重要な光学特性の1つである単散乱アルベド(single scattering albedo ; SSA)が海洋性気団に覆われた小笠原の代表的な気象条件下では0.98〜1.0であるが、春季(4月)には0.96〜0.98、冬季(1月)には0.9前後の低い値となることがわかった。 2.一方、2002年〜2005年の間、毎年9月に実施された南極観測船「しらせ」による船上観測では、異なる気団を持つ気象条件下で異なる光学特性を示す3つの類型に大別される観測結果を得た。そのときSSAは、清澄な海洋性気団のもとでは0.98〜1.0、土壌性粒子や人為起源エアロゾルを含む大陸性気団のもとでは0.94〜0.98、大陸起源ながら日本上空を通過中に人間活動の影響を受けたと考えられる汚染大気のもとでは0.85〜0.94の値を示した。 3.父島の観測結果としらせの観測結果は整合している。すなわち、共に清澄な海洋性気団のもとでは光吸収性の低い海塩粒子が支配的であるが、春季の大陸性気団が黄砂に代表される土壌性粒子を含むようになるとSSAはやや低い値をとるようになり、さらに、冬季モンスーンの強い吹き出し時に日本列島の風下に位置する父島では、日本上空を通過中に燃焼性物質を含む汚染の影響によりさらに低いSSAを示すようになる、と結論付けることができる。
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