研究概要 |
1.東アジア域の雲の光学的厚さと雲粒有効半径を衛星データを用いて水雲を対象として行なった。1981∧1999年のデータについて、各年の1,4,7,10月について解析し、年平均値はこれらの結果から求めた。長期解析は衛星が変わること、極軌道衛星であっても打ち上げ後に軌道がずれることから雲の日変化や雲の不均質性と太陽天頂角の違いによる影響などに注意する必要があることがわかった。以上を考慮した結果、中国大陸上の水雲は過去20年間に、光学的厚さはあまり変化していないが雲粒有効半径は減少する傾向にあることがわかった。先に述べた誤差要因を取り除くために衛星通過時刻が近い1985年と1995年について詳細に比較した所、1995年の方が雲粒有効半径が1μm程度小さく、地理的分布は両年ともSO2の排出量と良い相関があることがわかった。このことは、いわゆるエアロゾルの間接効果を示唆するものである。 2.東アジア域のエアロゾル特性(光学的厚さ、散乱係数、吸収係数、一次散乱アルビード、複素屈折率、質量濃度、数濃度、粒径分布、鉛直分布、水平分布、化学組成)の変遷を約200篇の学術論文を基に調べた所、一番多い観測例は化学組成で96例見られ、質量濃度は93例あった。他方、光学的特性に関するものは少なく、各々の項目について各々数例程度であった。いずれの観測も地表付近で行われているほか、観測地点が都市域に片寄っている。さらに一部を除いて長期観測の例が極めて少なく、経年変化を抽出することは難しい。これに対して、光学的厚さの観測事例は、全波長の太陽直達光の解析も含めて約20例ある。全波長太陽直達光の観測は同じ原理の測定方法で連続的に行われており、20年以上の変化を見るためには有効である。それによると中国国内での光学的厚さの空間分布は、成都や重慶などの内陸の重工業都市や沿岸部で光学的厚さが大きいことがわかった。
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