研究課題
本研究課題では大気中におけるエアロゾルおよびその前駆体の動態を把握し、東アジアにおける現在・将来のエアロゾルの空間分布、沈着量分布を定量化し、これらの結果に基づき、大気環境の保全・改善計画を提言に結びつけることを目的として研究を進めた。本年度の研究成果は以下のとおりである。1.2002年12月〜2003年1月にかけての中国上海周辺においてオゾン、NOx、SO2などのガス状大気汚染物質とエアロゾルの航空機による測定を行った。人為的エアロゾルの大発生源である中国中南部地域における初めての空間分布の測定が遂行された。2.中国における航空機観測と同期して、沖縄において炭化水素連続測定装置による、エアロゾルの前駆体となる炭化水素の測定を行った。大陸起源と海洋起源など、気塊の起源によって炭化水素濃度に大きな違いが見られた。3.中国における航空機観測と同期して、若狭湾上空におけるエアロゾル、大気汚染物質の航空機観測を行った。2回行った観測の結果、全SOxに占める粒子態の割合は気塊の輸送経路などによって大きく異なっていた。4.硝酸、NOyの自動測定器の開発を行い。隠岐島において硝酸とNOyの自動連続測定を行った。2002年の12月1ヶ月間ではNOyに占める硝酸の割合が高く、この間の気塊は高濃度ではあっても十分に光酸化反応が進んだ、即ち長時間かけて輸送されてきたものであることを示していた。5.ACE-Asiaのスーパーサイトともなった済州島及び札幌で捕集したエアロゾル中の有機成分の測定を行ったところ、全炭素濃度は、一般に秋から冬・春にかけて高く、夏に低い値を示した。この結果は、全炭素の起源域が海洋ではなく、陸上に存在することを示唆する。これらソース地域からレセプター地域をカバーする航空機および地上での観測によって、モデルによる解析に資するデータの取得を進めた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (7件)