研究概要 |
1.目的 生体系での効率良い光電変換の電子・エネルギー輸送の人工モデルとして,タンパクならびに脂質2分子膜からなる疎水場層内に配列された金属ポルフィリン誘導体分子が働いている。本研究ではモデル疎水場として,リン脂質2分子膜ならびに疎水性ポリペプチド膜を用い,水溶液環境下での電極表面疎水場に置かれた金属ポルフィリンの酸化還元ならびに光電気化学反応の光電変換を調べる。疎水場界面層を利用した研究は今までにほとんど報告されてなく,生体系,特に生体膜内での光電変換や電子・エネルギー輸送が膜タンパク質で囲まれた疎水場で起きていることを考えると,新たな光電変換素子の開発が可能となる。 2.結果 (1)単分子層Mnポルフィリンの電子伝達速度:中心金属であるMnの2価/3価の酸化還元を利用して,電極と自己組織化単分子Mnポルフィリン間の電子伝達速度をボルムメトリーと電位変調反射から調べた。両者間の距離とともに速度が指数関数的に減少する。また,Mnポルフィリンを疎水性ポリペプチドで囲み,水溶液の影響を減らすと速度は増加する。(2)MgならびにZnポルフィリンの光電気化学:Mg, Znポルフィリンを含むリン脂質膜被覆電極を作製し,光応答電流を調べた。光応答電流のアクションスペクトルは,膜被覆電極の吸収スペクトルの類似な応答を示す。光電変換効率は0.1%程度の低い値であった。Mg, Zn以外のMn, Ni, Co,フリーベースのポルフィリンに関しても調べたが,その変換効率はさらに低い値であった。
|