メタンは天然ガスの主成分であり、その埋蔵量は石油と同程度の200-300兆m^3と云われているが、小規模なガス田が多く未利用のエネルギー資源である。本研究では、光触媒を用いて天然ガスから1段で炭化水素を合成することを目標とした。当初、松本らの表面科学の結果に基づいて銅触媒を用いて実験を行っていた。その際、石英製反応管に少量の酸化物を存在させると多量のエタン、プロパンをはじめとする直鎖状炭化水素の生成が確認された(量子収率1程度)。新たなGTLプロセスとなり得る可能性があるため、本実験の再現性や温度の効果などを詳細に調べることにした。装置には流通系反応装置を用いた。石英製反応器(管長18cm、内径7mm)に1気圧のヘリウム希釈10%メタンを流し(0.5cc/min)、同時に室温から423Kの範囲で紫外光(低圧水銀ランプ)を照射する。反応器内に少量の酸化物を加えておくと多量のエタン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレンが生成した。光子数を10^<15>(photon/cm^2s)と仮定すると量子収率は1と計算される。定常的にエタンおよびプロパンが生成し、光を再度オンにすると直ちに光反応は回復した。光照射下でヘリウムのみを流しでもこれら炭化水素は全く検出されない。また、反応器を加熱すると収率は増加する。本結果はFT合成における炭化水素生成反応に類似しているようにみえる。本反応は光触媒を用いたGTLプロセスになり得る可能性がある。
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