本研究では、ガラス基板上に微細加工技術を用いてサイズ・流路パターンを自在に設計できるマイクロチャネルに、マイクロ電極やパターニングした化学修飾界面を集積化し、マイクロチャネルの特長を利用した新規化学プロセスを開発することを目的とする。本年度は、マイクロ電極の集積化と、化学機能界面としてフォトクロミック色素を修飾することを試みた。 電極集積化法として、リフトオフ法によるパターン作製と、水ガラス熱融着法を確立した。 前者は比較的低温で作製できるため金、銀などを電極材料として用いることができる。後者は500度以上の高温プロセスのため白金などに限られるが、安定性の高い電極チップを作製できる。作製した電極チップを用いて、チャネルの特長を生かした電気化学熱レンズ信号検出法を開発し、電極反応の高感度測定に成功した。さらに最適化を検討している。 スピロピラン誘導体は、光照射により極性が大きく変化する。これをチャネル内壁面に化学修飾することで界面の濡れ性を変化させ、これによるチャネル内流体の光制御を試みた。本年度はチャネル内壁修飾に適したスピロピラン誘導体を合成し・修飾し、原理の確認を行った。結果、光照射により可逆的に接触角、すなわち濡れ性を制御できること、その変化は小さいながらも水と空気、あるいは水とヘキサンを分離することに成功した。今後、応答性、耐圧性、あるいは界面張力との関係等を検討し、チャネル内流体と界面物性との関係を明らかにし、光制御可能な相分離デバイスへの応用の可能性を検討する。
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