光機能界面の学理は、光エネルギー変換や光触媒の新展開を促進するとともに新しい機能性材料を創生する上で重要である。特に、異なる物質間に形成される界面では、ナノメートルスケールでの構造制御が物性と機能の発現に本質的重要性をもつ。本研究では、界面物性制御材料のひとつとして秩序配列したナノ構造をもつ分子系に着目し、光機能や電子的機能を発現する新しい分子組織体を構築しデバイスへと展開することを目的として、(1)ポルフィリンJ会合体のナノ構造制御による励起子制御材料の設計、(2)ポルフィリンアレイπラジカルのナノ構造制御によるスピン整列、(3)酸化チタン表面におけるJ会合体の形成と界面電子移動を利用したスピン機能材料の開発、(4)エネルギー貯蔵型色素増感太陽電池の開発、を行なった。まず、プロトン化した非水溶性ポルフィリン誘導体が界面で自己組織化しJ会合体を生じることを見出し、その会合構造や励起子相互作用の大きさに様々な変調を加えることを可能とした。また、J会合体ナノシートヘテロ積層膜を構築し、高効率励起エネルギー移動を観測した。一方、直結型ポルフィリンアレイのπラジカルを生成させ、多重項状態を実現した。これはナノ構造制御によるスピン間相互作用の変調が可能であることを示しており、分子磁性やスピン間相互作用を利用する機能材料を構築する上で重要である。さらに本研究では、エネルギー貯蔵型色素増感太陽電池の基本構造を開発した。出力安定性と低コストを実現する上で重要なブレークスルーであり、今後太陽電池の普及に寄与すると期待される。
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