研究概要 |
本研究では、金属錯体をテンプレートにしたラングミュア・ブロジェット(LB)法を行い、機械的に強固な有機・無機ハイブリッド薄膜を製造し、それを用いた光感応性センサを開発することを目指した。すなわち単層剥離した粘土分散液上にRu(II)ポリピリジル錯体からなる陽イオン性両親媒性金属錯体の単分子膜を形成させ、粘土粒子(陰イオン)を静電相互作用により下層から吸着させた。その結果、粘土1層に裏打ちされた粘土・金属錯体ハイブリッド膜が形成されることがわかった。得られたハイブリッド膜を水面上から固体基板に累積し、その構造を各種分光法(AFM、外部反射赤外分光法、in-plane XRDおよび鏡面X線反射法)によって解析した。さらに、機能性分子(金属錯体)を任意の順序で積層した層状化合物を形成した。この方法によって製造した膜を電極基板上に累積し、機能性修飾電極として用いた。特に、光イオン化によって生じたRu(III)錯体の再還元を効率的に行う条件を確立した。また、同じ修飾電極を光照射し、得られた光電流の大きさによってキラル分子の検出を試みた。その結果、Ru(II)ポリピリジル錯体と粘土薄膜との複合膜で修飾したITO電極はキラル分子として1,1'-ビナフトールの絶対配置を含めて検出できることが解った。すなわち、Δ-Os(phen)2+/粘土単一層膜で修飾したITO電極は、0.1MNaClO4水溶液中のR-1,1'-ビナフトール(0.1mM)を同じ濃度のS-1,1'-ビナフトールよりも光照射下で約1.5倍大きな速度で酸化することがわかった。
|