本研究では光触媒反応の反応活性種の触媒上での発生場所とその時間依存性について明らかにし、それをもとに新しい触媒設計を行うことを目的として、現在まで、酸化チタン懸濁系における、ESRスピンプローブによる一重項酸素の検出、テレフタル酸蛍光プローブによるOHラジカルの定量と結晶形の影響などの研究を行ってきた。 酸化チタン懸濁系では、スーパーオキサイドイオンの観測をハロゲンイオン類の存在下で調べることから、光誘起された価電子帯正孔は、トラップされてから反応することを見出した。粉末系光触媒反応では、スーパーオキサイドイオンは正孔との反応で消滅する場合のほかに、不均化二分子反応で消滅する場合があり、長い寿命を持つ事が分かった。 スーパーオキサイドイオンの酸化により生成が予想される一重項励起酸素は生成しているが、水の存在で励起状態の寿命が短くなるので、ある種の反応にのみ寄与しており、多くの場合は無視できると考えられる。 酸化チタン薄膜の表面の吸着水を固体NMRで観察したところ、水の運動性により2種類の水が観測されることが、温度変化や熱処理したサンプルでわかった。光照射により、運動性の低い水の信号に変化があることから、超親水性の機構として指摘されている、光照射による表面構造変化に対応することがわかった。 空気中の光触媒反応でも、アルコールなどでは、反応物が直接酸化チタン表面に吸着するのではなく、数分子層あるといわれている水分子の中にあり、その状態から光触媒反応を起すことが、固体NMR測定からわかった。
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