研究概要 |
光触媒は既に一部実用化されているが、高機能性を持たせるために更なる改良が期待されている。そこで、本研究では光触媒反応の反応活性種の触媒上での発生場所とその時間依存性について明らかにし、それをもとに新規の高活性触媒を設計することを目的としている。本年度は、光触媒系における活性酸素種のうち、一重項酸素とOHラジカルについて観測した。一重項酸素は酸化チタン光触媒に吸着した状態で発生し、多くは酸化チタンとの相互作用で消光し、一部のみ溶媒の影響を受けることがわかった。すなわち,今まで光触媒中の再結合過程としていたものには,酸素分子の還元と酸化による一重項酸素発生とその失活という速い過程が含まれていたと考えられる。反応しないで失活する場合が多いといえども、一重項酸素と反応性が高いことが知られている有機物とは1マイクロ秒以内に反応することを見出した。酸化チタン表面から気相中に脱離したOHラジカルをレーザー誘起蛍光法により直接検出することで、OHラジカル生成の時間変化の測定を行うとともに、その発生機構を検討した。光触媒から放出されるOHラジカルは,酸素の二電子還元,あるいは水の二電子酸化により生成され蓄積される、吸着状態の過酸化水素が光触媒的に還元されることで発生したものであると考えられる。熱処理により、表面のOH基の状態が変化すると、OHラジカル生成が増加することを見出した。チューブ状のチタニアを作製し,その活性を調べた。負電荷を持つチューブ構造が反応物を高濃度に取り込むために、特に、正電荷を持つ物質の分解に有効であることが見出した。今後、過酸化水素についての時空間解析を行うとともに、酸化チタン表面の状態特に表面水酸基の種類と分布と活性種の関係等を更に研究すれば、高活性触媒設計のための有力な指針が得られる。
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