水相に微量に溶け込んだ疎水性有害有機化合物を選択的に吸着・除去する能力を有することが知られている親油性粘土鉱物の層間疎水場中に、取り込んだ有害有機化合物の光分解能を付与するため、親油性粘土鉱物層間へのチタニア微結晶の導入を試みた。このような系を実現するためには、層間疎水場形成物質である両親媒性分子を層間に存在させなければならない。そこで、高温での焼成を行わずチタニア結晶の析出を可能とする水熱合成法を利用し、親油性粘土鉱物層間にチタニアナノ結晶の析出させることに成功した。比較として両親媒性分子により層間を修飾していない粘土鉱物層間へのチタニアナノ結晶の析出も行い、これにも成功した。これら二種類の複合材料による水相からの有害有機物質の吸着・除去及び光分解に関する検討を行うために、有害有機物質として環境ホルモンとしての疑いをもたれているビスフェノールAを用い、実験を行った。その結果、チタニア/親油性粘土複合体は、チタニア/粘土複合体よりも高い吸着・除去能を有するだけではなく、層間疎水場に効率よくビスフェノールAを吸着・濃縮できるため、チタニアナノ結晶により効率よくビスフェノールAを分解・無害化する能力を有していることを明らかにした。これらの結果は、これまで汚染水の無害化に用いられていた各種吸着材料が潜在的に有していた使用済み吸着材料の処理問題を考慮する必要の無い、「光分解能を有する疎水性吸着材料」という新しいタイプの水質浄化材料を本研究により作製することに成功したことを示している。
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