研究概要 |
三塩化チタンを含む四塩化チタンの1,4-ジオキサン溶液の加水分解によって生成させた二酸化チタンコロイドの定常光およびフェムト秒時間分解吸収分光によりそのキャラクタリゼーションを行った。コロイド溶液の吸収スペクトルは、ルチル型二酸化チタンのものに類似したが、3価のチタンに基づく可視域の吸収は見られなかった。このことはコロイド作成中に3価のチタンは4価に酸化されたものと考えられる。また間接遷移に基づくと思われる弱い吸収のテールが390-500nmの広い範囲で見られた。このコロイド溶液の400nmにおける励起により得られた過渡吸収スペクトルは、励起直後に550nmに極大をもつブロードなスペクトルを示した。この吸収帯のピークは、時間と共に短波長シフトし、ほぼ2psで430nmに収束した。この吸収はスペクトル幅を狭めながら減衰し、約5psで消失したが、ピークエネルギーと時間のプロットからその寿命は400+/-100fsと見積もられた。この過渡吸収のシフトは、観測された過渡種がトラップ状態にある電子-正孔対がさらに深い状態へ緩和し再結合することで説明されると考えられ、励起が間接遷移であることと試料が三塩化チタンを含む四塩化チタンから調製されたことによりトラップとなる欠陥の生成が促進されることによると思われる。このことより一般的に結晶格子に欠陥をもつ二酸化チタンにおいては、欠陥サイトでの電子-正孔対再結合のために光触媒能が低下することが予想される。
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