本研究は、紫外光励起過渡反射率測定、および、ダブルパルス励起過渡反射率測定に基づき、斬新かつ有用な光機能界面計測法「固液界面フェムト秒時間分解光電子分光法」に相当する計測手法を開発し、固液界面における光電子放出ダイナミクスを追跡する可能性の検証を目的とした。ここで紫外光とはモードロックチタンサファイヤレーザーの第2および第3高調波であり、固液界面は電位制御された金単結晶(111)面/電解質水溶液系である。既存のフェムト秒チタンサファイアレーザーを光源とする過渡反射測定装置の光学系に、第2または第3高調波を励起光としての高精度測定を実現するために、高調波発生装置系と音響光学変調器を組み込んで改良した。自作電気化学セルを組み合わせて、1)波長270nm励起でのフェムト秒過渡反射率測定、2)波長400nmでのダブルパルス励起によるフェムト秒過渡反射率測定の2つを行った。波長270nm励起では、過渡的な反射率変化は観測できるもののフェムト秒応答を得ることができなかった。実験条件を検討した結果、400nm励起時に比べて270nm励起時ではフェムト秒過渡反射率変化が弱い可能性が示唆された。一方、波長400nmでのダブルパルス励起ではフェムト秒応答が得られ、金(111)面-過塩素酸水溶液系で過渡反射率応答の電位依存測定に成功した。各パルスで単独励起した場合の和と2つのパルス光で同時励起する場合とに差が観測されたことから、固液界面での2光子励起過程が観測できるものと推定された。また、電極電位によって、この差の程度が異なることが観測されている。この結果は、固液界面フェムト秒時間分解光電子分光法の可能性を示唆する成果である。270nm励起での信号検出が不調であったため、固体から液体中へ光電子が放出された確証を得ていないことが課題として残るが、今後、波長依存測定により検証できると考えられる。
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