本特定研究では、チオール類で表面修飾したCdS微粒子コロイド溶液の光触媒化学初期過程についてのサブピコ秒時間分解過渡吸収からの議論を補完するために、吸収と表裏一体の関係にある発光測定(サブピコ秒レーザー励起の非時間分解および時間分解)から、その光触媒初期過程(電荷分離、電子・正孔再結合過程)における表面修飾剤の挙動について検討した。 サブピコ秒レーザーパルス(76MHz)励起での表面修飾CdS微粒子の非時間分解発光測定においては、深いトラップ状態からの長波長側発光のみが観測され、その強度や極大波長は表面修飾剤の種類や溶媒によって大きく異なる。Cd^<2+>の添加は、ET-CdSの発光にはほとんど影響しないが、TG-CdSの発光を30%程度増加させる。その結果は、表面修飾剤の特性(電荷等)の違いで説明できる。 蛍光アップコンバージョン法による時間分解発光測定は、先ず、組み込んだアップコンバージョン光学系の評価と和周波シグナル検索を容易にするために、Boxcar積分器を用いて、既に報告されているβ-カロチンと本研究で用いるTG-CdSについて、10Hzサブピコ秒レーザーパルス励起で行った。その結果、光学系の時間分解能は、400fs程度であることがわかった。 現在、溶媒等からの白色光発生を抑えるために、フォトンカウンターを用いる単一光子計数法で、より励起強度の弱い76MHzサブピコ秒レーザー励起でのアップコンバージョン測定が進行中である。
|