研究概要 |
可視光応答型の光触媒を用いた二酸化炭素と水からの有用な炭化水素類の合成は、地球温暖化の抑制および炭素資源の有効利用の観点から注目すべき重要な研究課題である。本研究では、各種ゼオライトの骨格内に原子レベルで高分散した四配位構造の酸化チタン光触媒(TS-1,Ti-MCM-41,Ti-MCM-48,Ti-HMS)の構築を試みるとともに、その上での二酸化炭素の水による還元固定化反応について検討した。さらに、これらTi/Zeolite触媒にイオン注入法により微小量の遷移金属イオン種を注入し、酸化チタン種の電子状態に摂動を与えることで可視光で機能する新規なTi/Zeolite触媒の構築を試みた。 UV-VisおよびXAFS測定により、Ti/Zeolite中においてTi種は孤立高分散状態の四配位酸化チタン種としてゼオライト骨格内に組み込まれていることがわかった。これらTi/Zeoliteを光触媒としてCO2とH2Oの存在下紫外光を照射すると光照射時間に比例してCH4,CH3OHが生成した。Ti/Zeolite触媒は粉末酸化チタン光触媒に比べCO2のH2Oによる還元反応に高い活性を示すほか、生成反応物収量において高いメタノール選択性を示すことがわかった。さらに、イオン注入法を適用して、Ti/Zeolite触媒の可視光化について検討した。Ti/Zeolite触媒にVイオンを注入するとTi/Zeolite触媒のUV-Vis吸収スペクトルは、注入イオン量に依存して長波長側にシフトし可視光を吸収することがわかった。また、吸収のシフトの程度はゼオライトの合成法や構造の違いにより異なり、特に、HMSを用いた場合にUV吸収の長波長側へのシフトが顕著になることを見いだした。さらに、Vイオン注入Ti/ZeoliteのVK-edge EXAFS測定およびVイオンを含んだゼオライトモデルのab initio計算により、注入したVイオンは孤立四配位状態で存在するとともに四配位Ti酸化物種に隣接しTi-O-V結合を形成し、これにより四配位Ti酸化物種の電子状態に摂動が生じ、可視光応答型光触媒の創生が可能となることがわかった。
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