既存の直流、或いは高周波マグネトロンスパッタ装置を用いて、スパッタターゲットとしてチタン金属、二酸化チタン、還元された酸化チタンの3種類を用いて酸化チタン薄膜を作製し、その構造と光触媒活性度との相関関係を調べた。還元された酸化チタンターゲットを用いた場合、十分な電気伝導度を有しているために直流放電を安定して行うことが可能で、既存のスパッタ装置を用いても、ある程度の高速成膜が可能なことを実証した。さらに、種々の分析機器を装備したDCスパッタ装置のエネルギー分解能をさらに向上させ、スパッタプロセス中の負イオンのフラックスとエネルギー、スパッタ粒子のフラグメント等のin-situ測定により、種々のスパッタパラメータが薄膜成長過程に与える影響を定量的に詳細に解析した。また、様々な単結晶基板を用いてアナターゼ、並びにルチルのヘテロエピタキシャル薄膜の作製を継続して行い、密度汎関数法によるバンド計算の結果をふまえながら光触媒活性度の結晶方位依存性に関して考察を行った。このように、様々なスパッタ成膜プロセス、薄膜構造、光触媒活性の相関関係に関して総合的な立場から研究を行った。 さらに、50kHzで矩形波パルス状に電圧を印可したカソードと特設したアノード、並びにin-situでのプラズマ発光モニタリングによるプラズマ制御システムを併用した成膜方法(ユニポーラパルススパッタリング法)を完成させ、通常のスパッタ法に比べ約20倍以上(90nm/min以上)の成膜速度での酸化チタン光触媒薄膜の作製方法を確立した。
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