高密度光磁気記録材料開発などの観点から、光照射により磁性、金属のスピン状態の可逆なスイッチングが可能な固体物質開発が盛んである。従来報告されている光磁性スイッチング現象の基本は、基底状態に光照射を行うことにより準安定状態を捕捉できるという、双安定性を示すものである。しかしながら、それらの準安定状態の捕捉の多くは極低温でのみ実現されるものであり、室温における磁性の光制御が求められているにも関わらず、新規な系の設計が難しく、設計指針が一般化されていなかった。そこで本研究では、そのための新たな設計指針の一つとして「光応答性を示す分子を利用した光磁性制御」を提示し、いくつかの光スイッチング可能なシステムを創製し、徐々にその性能を高めてきた。終盤では、磁性体ナノ微粒子の表面をフォトクロミック分子であるアゾ化合物で修飾することによって、室温にてその磁性を可逆に光スイッチングすることに成功し、なかでも、FePtナノ微粒子を用いた際には室温強磁性も実現しており、光記録材料などへの応用も期待できるようになってきた。また、逆ミセル法を用いた光制御型磁性ナノ微粒子の作製や、磁性金ナノ粒子を利用したシステムの構築など、新規な光磁性システムの創製にも成功した。
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