研究概要 |
Cr^<3+>とSb^<5+>を共ドーピングしたTiO_2とSrTiO_3の拡散反射スペクトルを調べた結果,可視光領域に大きな吸収を持っていた。SrTiO_3:Cr/Sbの拡散反射スペクトルでは,SrTiO_3の基礎吸収に加えて,可視光領域に裾を持った吸収バンドが存在した形になっていた。TiO_2:Cr/SbとSrTiO_3:Cr/Sbの吸収端から見積もられたエネルギーギャップは,それぞれ2.2,2.4eVである。TiO_2をベースとした触媒では,メタノール水溶液からの水素生成反応にはほとんど活性を示さなかったが,可視光照射下での硝酸銀水溶液からの酸素生成反応には活性を示した。このTiO_2:Cr/Sb光触媒は,この酸素生成反応に対して680nm以下の波長を持つ可視光を利用できることがアクションスペクトルの測定からわかった。可視光照射下での硝酸銀水溶液からの酸素生成反応に対するTiO_2:CrへのSbの共ドーピング効果を調べた結果,Sb/Cr比が1より少ない場合には,触媒の色は黒であり,活性を示さなかった。それに対して,1以上の場合はオレンジ色となり活性が発現した。そして,仕込み量が1.5付近で最大活性が得られた。一方,伝導帯のポテンシャルがルチル型TiO_2よりも高いSrTiO_3にCr/Sbを共ドーピングした場合では,水素生成に活性を示した。このように,この共ドーピング系では,その電荷を補償するために5価のSb^<5+>をドーピングすることにより,可視光吸収特性を維持したまま,再結合中心としての役割を抑えることができたため,比較的高い活性が得られたと考えられる。
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