研究概要 |
CuInS_2(バンドギャップ:1.44eV)は,可視光のほぼ全領域に吸収を持つ黒色の半導体材料である。Ruを助触媒として担持したCuInS_2が,300W Xe lampとcut-off filter L42(波長>420nm)を用いた光照射下において,硫化ナトリウムと亜硫酸カリウムを含む混合水溶液からの水素生成反応に,189μmol/hと高い活性を示す黒色硫化物光触媒であることを見いだした。CuInS_2に,エネルギー構造を制御し,高活性化を試みるため,CuInS_2のGaまたはAgを置換させた。その結果,Ruを担持したCuGa_0.3>In_<0.7>S_2(バンドギャップ:1.65eV)は,781μmol/hの活性を示した。そして,Ruを担持したCu_<0.5>Ag_<0.5>InS_2(バンドギャップ:1.52eV)は,874μmol/hと黒色光触媒の中でもっとも高い活性を示した。このように,可視光の全領域を吸収できる水素生成のための黒色光触媒を開発した。この光触媒は,廃硫黄化合物を有効に利用した水素製造に利用できる可能性がある。一方,IrをドーピングしたSrTiO_3が,可視光照射下においてメタノール水溶液からの水素生成反応に活性を示すことを見いだした.そして,低温・短時間での合成が可能なソフトプロセス合成による高活性化について検討したところ,固相法により合成した触媒よりも高い活性が得られた。固相法で合成した触媒の粒径は1μm程度であったが,ソフトプロセスでは100nm以下であった。このように,ソフトプロセス合成により得られた触媒では,粒界が少ないために生成した電子と正孔の再結合が抑えられ,かつ粒径が小さいためにそれらのキャリアーが触媒表面へ移動しやすいことで,活性が高くなったと考えられる。
|