研究概要 |
本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1.半導体人工分子のスピン状態 スピントランジスタと量子ドットで構成される半導体人工分子のスピン状態を理論的に調べ、スピントランジスタに印加するゲート電圧で人工分子のスピン状態を制御できることを示した。量子ドット間をトンネルする電子のスピンを、スピントランジスタを用いて180°だけ回転させることにより、反強磁性的なスピン状態を強磁性的なスピン状態に変換することができる。 2.超伝導体へのスピン注入 超伝導体に対するスピン注入について理論的に調べ強磁性体・超伝導体・強磁性体におけるアンドレーエフ反射を記述する基礎理論を確立した.その理論を用いることにより実験で得られたトンネル磁気抵抗効果の超伝導膜厚依存性を再現した.また超伝導体中のスピン蓄積についても研究を行い,超伝導体を用いることによってスピン蓄積による電位差が増大することを見いだした. 3.単一電子トランジスタの電流電圧特性及びノイズの効果 単一電子トランジスタを流れる電流とそれに伴うノイズについて理論的に調べ,高次のトンネル過程を含めた理論を構築し,従来の理論では扱うことのできなかったクーロンブロッケード領域と逐次トンネル領域の境界領域における電流・電圧特性を計算することに成功した.また単一電子トランジスタを用いた量子情報素子の特性についても研究を行い,量子ビットの状態を測定するのに最適なパラメータ領域を特定した.
|