研究概要 |
スピントロニクスへの応用を目指した新材料の探索とその人工微細構造の作製を、II-VI族希薄磁性半導体(DMS)をベースとしてMBE法を用いて行った。前者については特にキャリアドーピング効果に注目した研究を行い、今年度は以下のような成果が得られた。 (1)p型(Zn, Mn)Teの磁気輸送特性の解明とキャリア誘起強磁性の確認 まずMn組成およびキャリア濃度を系統的に変化させた試料についての詳しい磁気輸送特性測定からは、低温での磁気ポーラロン効果を明らかにすることが出来た。また、Mn濃度3.4%、キャリア濃度4.7x10^<19>cm^<-3>の試料において2Kと2.5KでHall抵抗率および磁気抵抗率の磁場依存性にヒステリシスが現れ、強磁性転移していることが確認された。更にレーザー照射によりキャリアーを増加させると強磁性が増大する振る舞いが観測され、キャリア誘起強磁性であることが示された。 (2)(Zn, Cr)Teの作製と磁気的、電気的特性の研究 室温以上のTcを有する強磁性DMSとなり得る材料として、(Zn, Cr)Teが注目を集めている。この材料の強磁性発現の確認および強磁性発現のメカニズムを調べることを目的として、MBE法により(Zn, Cr)Teを作製し、磁化測定、磁気輸送測定を行った。Cr濃度が数%までは結晶性の良い試料が得られ、Cr濃度約2%の試料の磁化測定の結果、強磁性特有のヒステリシスが観測され、Tcは15K程度と見積もられた。また磁気輸送特性は、低温において異常なホール抵抗率が観測されたが、磁化測定で見積もられたTc以上の温度においても正常なホール抵抗率とは異なる振る舞いが観測され、現在その解析を行っている。 (3)更に磁性2次元電子系(Cd, Mn)Te/(Cd, Mg)Teの磁気光学効果及びCdTe, CdMnTeの量子ドットの作製についても多くの知見を得て、更に研究を継続している。
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