研究概要 |
スピントロニクスへの応用を目指し、II-VI族希薄磁性半導体(DMS)をベースとした人工微細構造および新材料のMBE法による作製とその新規物性の解明を行った。 1.(Cd, Mn)Te自己組織化ドット ドットの下地層をこれまでのZnTeから(Zn, Mg)Te混晶に代え、その上にCd(Mn)Teドットを成長した。障壁層のバンドギャップの増加に伴うより強い閉じ込め効果の結果、PL発光強度の温度依存性などの特性が改善されることを見出した。またCd(Mn)Teドット層/ZnTe障壁層を数十周期繰り返した積層構造を作製しPL測定で縦方向のドット間の結合による発光ピークを観測した。 2.(Zn, Mn)Teへの正孔ドーピングと強磁性 窒素をドーパントとしたp型(Zn, Mn)Te薄膜を成長し、Mn組成、正孔濃度を系統的に変化させた試料の磁性、磁気輸送特性を調べた。強磁性転移温度としては最高3Kを観測し、磁気輸送特性に見られる負の磁気抵抗が磁気ポーラロン形成で説明できることを示した。また磁化の大きさに異方件があることを見出し、薄膜の歪の方向と結び付けて解釈した。 3.(Cd, Mn)Te変調ドープ量子井戸における磁性2次元電子系の物性 Cd_<1-x>Mn_xTe/Cd_<1-y>Mg_yTe変調ドープ量子井戸構造を作製し、磁性2次元電子系の研究を行った。ゲート電圧制御により電子濃度を連続的に変化させて磁気輸送測定を行い、上記の準位交差が伝導特性に与える影響を系統的に調べた。その結果、準位交差近傍で特異な磁気抵抗の振舞いを見出した。さらに量子ホール強磁性と結び付けて解釈を行った。 4.新規磁性半導体(Zn, Cr)Teの成長と強磁性発現 MBEによりCr組成が最大で17%までの(Zn, Cr)Te薄膜を成長した。磁化測定で低温で磁化曲線に履歴現象が見られた。Arrottプロットから求めた強磁性転移温度TcはCr組成xにほぼ比例して増加し、Cr組成17%のとき最大値275Kであった。ただし、磁化の温度依存性(M-T)においては磁場下冷却(FC)と零磁場下冷却(ZFC)の間で大きなずれが見られるなど、超常磁性的な振舞いが見られた。
|