研究課題/領域番号 |
14076205
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
滝田 宏樹 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (00011213)
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研究分担者 |
尾崎 信彦 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助手 (30344873)
黒田 眞司 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教授 (40221949)
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キーワード | スピントロニクス / 強磁性半導体 / 分子線エピタキシー / キャリアドーピング / 二重交換相互作用 |
研究概要 |
電子のスピン自由度を利用したエレクトロニクス(スピントロニクス)の実現には室温で強磁性になる半導体材料の開発が必須と考えられている。このような室温強磁性半導体の候補の一つとしてCrドープII-VI族半導体が期待を集めている。我々はこれまでこの新規強磁性半導体として注目されるCrドープZnTeの結晶作製と物性の研究を行ってきたが、今年度は特にキャリアドーピングの磁性への影響に焦点をあてて研究を行った。 結晶作製には分子線エピタキシー(MBE)法を用い、p型ドーピングにはプラズマ励起した窒素(N)を、n型ドーピングにはヨウ素(I)をそれぞれドーパントとして添加し、結晶成長を行った。成長した薄膜試料はX線回折、透過電子顕微鏡観察などを行い、異相の析出物が存在せず、CrがZnサイトを置換した純粋の希薄相であることを確認した。これらの試料に対し、磁化測定を行ったところ、p型ドーピング試料では同一Cr組成の非ドープ試料に比べて、磁化曲線における履歴現象が消失するなど強磁性が抑制されることが明らかになった。一方、n型ドーピング試料では磁化曲線の履歴が拡大し、強磁性転移温度も大幅に上昇するなど、強磁性は全体として増強されることがわかった。これらの磁性の変化は、強磁性の起源として二重交換相互作用を想定すると定性的に説明できることがわかった。すなわち添加したCrは母体のZnTeのバンドギャップ内にd電子の局在準位を形成し、この3d局在準位が部分的に占有されるために、3d電子間に強磁性的な二重交換相互作用がはたらく。これにさらにドーパントを添加すると、p型の場合は3d電子状態密度が減少し、n型の場合は逆に増加するため、二重交換相互作用はそれぞれ抑制、増強されると考えられ、実験の結果と定性的に一致する。
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