研究課題
スピン状態の観測にあたっては、短パルスレーザによるポンプ・プローブ磁気光学分光法や偏光ポンピングによる磁気発光分光などが頻繁に利用される。磁気光学分光の光学配置としては、励起光照射と信号光検出をともに開口を通しておこなうことが望ましい。信号検出感度の向上を目指し、ホモダイン干渉によって信号成分を大きく増強することを提案した。本測定法が高感度であることを確認するため、深さ2nmのナノチャネルのイメージングをおこなった。ここでは、プローブ振動にともなう反射光の強度変化を利用してイメージングをおこない、平坦部とチャネル部で1:4というきわめて大きなコントラストを得ることができ、本手法の有用性を実証した。また、干渉を用いた偏光変化の検出についてもデモンストレーションをおこなった。ここで偏光変化の起源としては、試料そのものの光学的異方性ではなく、開口形状の非対称性を利用した。この場合も非常に高いコントラストでその違いを可視化することに成功した。半導体量子構造におけるスピン状態の生成、検出、操作、制御を目的として、磁場印加のもとで動作する低温NSOMの開発をおこなった。装置のデモのためGaAs量子ドットの発光イメージングをおこなった。試料の基本構造は量子井戸である。ただし界面が一原子層レベルで揺らいでいるため、井戸層の厚い領域(アイランド)は横方向にも緩い閉じ込めポテンシャルを形成し、擬似的に量子ドットとしてふるまう。空間分解イメージングの結果、量子アイランドの実際の形を認識でき、空間分解能は約40nmと見積もることができた。続いて、発光スペクトルについてその磁場強度依存性を測定した。磁場の増大にともない、発光スペクトルの反磁性シフトが観察され、その係数として40μeV/T^2という値を得た。この結果は、100nm程度の大きさをもつGaAs量子ドットに対する数値として妥当な結果である。
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Japanese Journal of Applied Physics 44, 9A
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