研究概要 |
量子ドット単体におけるFano干渉効果の発見とその解析による「同位相Coulombピーク問題」の解決 ファノ(Fano)効果は,本来連続準位と離散準位を通した伝導径路間の干渉によって生じるものであるが,これが,外部干渉回路を一切持たない量子ドットにおいても生じることを発見した.これは,量子ドット内に電極との結合が特異的に強い強結合状態が生じ,この状態を通した同時トンネルと,フェルミ準位付近の状態を通した伝導との間で干渉が起こるものである.量子ドットのCoulombピークにおいて,同じ位相を持つものが連続することが,長い間謎とされてきたが,Fano効果と電流電圧特性の解析から,連続するCoulombピークが同位相になる原因がこの強結合状態からの量子力学的な混じり込みであることを明らかにした. 2次元正孔系と強磁性半導体界面伝導における巨大磁気伝導度の発見 (Al, Ga)As/GaAsの上下反転型2次元正孔系を作製し,その上部に,AlAs層をトンネル層として強磁性を示す希薄磁性半導体(Ga, Mn)Asを積層し,2層間のトンネル伝導を測定した.伝導度は600mK以下で急激に減少するが,0.2T程度の小さな磁場で伝導度が2桁増大する超巨大磁気伝導度を発見した.この磁気伝導度は数秒程度の緩和時間で時間と共に減少するという著しい性質を持っている.
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