研究概要 |
・Zn1-xCoxO (x=0.05)のCo 2p吸収端におけるX線吸収スペクトル(XAS)とその磁気円二色性(MCD)を測定し,スペクトル形状をクラスターモデル解析した.見積もられた電子構造パラメータは光電子分光から見積もられたものとほぼ一致し,遷移金属イオンの電子構造に関して,コンシステントな描像が得られた.しかし,MCD強度の磁場及び温度への依存性は,相互作用のない磁性イオンのものとは大きく異なり,Coイオン間に強磁性的な相互作用と反強磁性的な相互作用が分布して存在することが示唆された. ・Zn1-xVxO (x=0.05)については,V 2p-3d共鳴光電子分光を行い,ZnOのバンドギャップ中に現れるV 3d状態のスペクトル強度がフェルミ順位近傍で抑制されていることを確認した.また,内殻磁気円二色性からVはZn2+を2価で置換しその一部が磁化を担っていることが示唆された. ・Zn1-xCrxTe (x=0.045)の内殻MCDを測定し,ドープされたCr2+イオンの軌道磁気モーメントの消失が観測され,ヤンテラー変形が示唆された.もしそうならば,軌道分極による強磁性機構が考えられる. ・MBE法で作成された磁性半導体MnGeP2の光電子分光と内殻MCD測定を行った.この物質は320K以下で強磁性を示す.価電子帯光電子スペクトルとMCDから,強磁性はMnPによるものではなく,MnGeP2本来の性質であることが示唆された. ・Ga1-xCrxN (x=0.015)のCr 2p吸収端におけるMCD及び共鳴光電子分光を行った.Cr 2p XASスペクトルはCr金属のそれとは異なる多重項構造を示したが,30%ノイズレベル範囲内で磁気円二色性は確認されなかった.共鳴光電子分光ではCr 3d部分状態密度がGaNバンドギャップ中に現れることが確認された.そのCr 3d部分状態密度はフェルミ準位で抑制されており,理論計算から予想される明確なフェルミ端は観測されなかった.
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