研究概要 |
・Zn1-xVxO(x=0.05)では,内殻磁気円二色性からVがZn2+を2価で置換しその一部が磁化を担っていることが示唆されているが,本年度は多重項理論による解析を行うとともに,磁化測定との比較も進め,本試料の磁性に関して定量的でコンシステントな描像を得た.すなわち,Vイオンのうちキューリーワイス型常磁性を担うものが約10%,非磁性(おそらく強く反強磁性的に結合したもの)が約90%であった.本試料は強い還元処理を行っていないために,強磁性成分は磁化測定にのみに弱く現れていた.さらに,常磁性のVイオンでは,非磁性のVイオンに比べてc軸方向の歪みによる結晶場が強くなっていることが示唆された. ・Zn1-xCrxTe(x=0.045)の内殻磁気円二色性を測定結果についても,多重項理論による詳細な解析を進めた.得られたヤンテラー変形はCrTe4四面体がxy面方向に縮む方向で,以前に電子スピン共鳴から結論されているバルクZnTe試料中のCrイオンのヤンテラー変形がz軸方向に縮む方向とは逆であった.この結果は,GaAs基板との格子ミスマッチで矛盾なく説明できた. ・GaN基板に金属Mnを蒸着し熱拡散させることによって磁性半導体の作製を試みた.光電子分光法を用いてアルゴンイオンスパッタリングにより深さ方向の化学結合状態・電子状態の分析を行った.試料表面には金属的なMn化合物の形成が見られたが,深部にはGa1-xMnxNに類似の物質が作られていることが見出された.基板のGaNにp型のものを用いた時にのみ,強磁性が観測された.また,GaAs-Mn系についても同様な熱拡散試料の作製と光電子分光による深さ方向分析を行い,試料深部に磁性半導体Ga1-xMnxAsに類似の物質が作られていることが確認された.
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