研究概要 |
本研究では,MBE装置と走査トンネル顕微鏡(STM)を装備した表面分析チェンバーを超高真空環境で結合した装置を駆使することにより,新しいスピントロニクスの要素材料・構造の創製とそのデバイス応用の可能性を探ることを目的としている. 本年度は,BEEMによるミクロなスピン偏極電流によるスピン状態の制御の研究の予備研究として,マクロなGaMnAs/GaAs/GaMnAsおよびGaMnAs/AlAs/GaMnAsトンネル磁気抵抗構造を作製して,磁気抵抗比の障壁高さ,およびバイアス依存性を調べ,並行して理論的検討を行い,これらの構造において電流注入による磁化の制御のために必要な条件について検討した.特に,そのために必須となる高い磁気抵抗比を得るための障壁高さとフェルミエネルギーに関する条件を明らかにした. また,第一原理バンド計算からハーフメタルのバンド構造を有することが予言されているMnAsのGaAs(100) c(4x4)表面上への初期成長過程を低速電子線回折の強度-加速電圧依存性の動力学的(LEED-IV)解析と走査トンネル顕微鏡(STM)観測を通して解析した.その結果,被覆率が75%以下の表面では,STMでは,1x2再構成を示す[110]方向に広がった島状構造を観測し,LEED-IV解析に基づき閃亜鉛鉱型構造をベースとした最表層にMn-AsおよびMn-Gaダイマーを有する表面構造モデルを提案した.しかし,この検討過程で成長の下地となるGaAs c(4x4)構造が,300℃程度の低温で相変化している兆候を捉え,GaAs c(4x4)構造に関する詳細なSTM観測とLEED-IV解析から200℃程度の温度でGa-Asの3連ダイマーを基本とするc(4x4)構造からAs-As3連ダイマーを基本とするc(4x4)構造に相変化していることを明らかにした.
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