研究概要 |
GaMnAsやMnAsなどGaAs(001)表面を基盤表面として用いる低温成長では,GaAs(001)c(4x4)再構成表面が,成長の初期表面として用いられるため,その理解を深めることは重要である.我々は,GaAs(001)c(4x4)表面のSTM観測およびLEED IV解析を行い,従来,単一の構造と信じられてきたc(4x4)再構成が,少なくとも2種類の構造をもち,通常の低温成長の条件でも両者が現れる可能性を示した.さらに,LEED IV解析に基づき2つの表面再構成表面の構造決定を行った.また,2種類の表面構造を仮定することにより,GaAsの低温成長中のRHEED振動の温度依存性のリエントラントな振る舞いや,MnAsの複雑な初期成長過程が,より合理的に理解できることを示した. また,GaMnAs系3層構造のトンネルスペクトル測定において,伝導率のバイアス電圧依存性において原点近傍に顕著なディップを観測し,GaMnAsの強磁性転移温度近傍で消失することを見いだした.さらに,このディップの起源をGaMnAsのフェルミ面近傍のエネルギーギャップの存在,マグノン励起による非弾性散乱などの観点から検討した. また,磁化誘起第二高調波発生をプローブとする(Ga, Mn)Asの時間分解非線形磁気光学カー効果の測定を通して,(Ga, Mn)As中のMnスピンが200 fs以内の高速な光キャリアとの相互作用をしていることを見出した.
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