研究概要 |
半導体とのヘテロ接合を作製する際に結晶整合性のよい高スピン偏極強磁性材料と、ワイドギャップ半導体に遷移金属元素を高濃度にドープした室温以上の転移温度をもつ透明強磁性材料を、電子状態の第一原理計算に基づいて系統的に探索し、スピントロニクスデバイスへの応用が期待できる新しい材料をデザインすることに成功した。 磁気ランダムアクセスメモリなどに用いられる磁気トンネル接合のトンネル磁気抵抗効果の向上や、スピントランジスタの実現に不可欠な半導体中へのスピン偏極電子の注入の高効率化のためには、伝導に寄与する電子のスピン偏極率が高い強磁性材料が必要である。そこで、半導体とのヘテロ接合を作製する際に結晶整合性のよい新しい高スピン偏極強磁性材料を、電子状態の第一原理計算に基づいて系統的に探索した。具体的にはIII-V族化合物半導体GaAsと同じ閃亜鉛鉱型構造をもつ3d遷移金属元素とV族元素とからなる化合物を対象として、隣接する遷移金属スピン間にはたらく磁気相互作用の強さ、ならびに電気伝導に寄与する電子のスピン偏極率を定量的に評価した。その結果、閃亜鉛鉱型CrAs及びCrSbがスピントロニクスデバイスへの応用に適した高スピン偏極強磁性材料であることを明らかにした。 円偏光発光デバイスへの応用という観点から、透明なワイドギャップ半導体ZnO及びGaNに3d遷移金属元素を高濃度にドープした磁性半導体を対象として、室温以上の転移温度をもつ透明強磁性材料を、電子状態の第一原理計算に基づいて系統的に探索した。その結果、酸化物半導体ZnOにMnを除く3d遷移金属元素をドープした場合、ならびにIII-V族半導体GaNにV, Cr, Mnをドープした場合に透明強磁性半導体となることを明らかにした。 なお、以上の研究成果を踏まえて次年度は、これら新材料と半導体とのヘテロナノ構造の第一原理計算に基づいて、高度なスピン機能を発現する新規デバイス構造のデザインに関する研究を実施する計画である。
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