研究概要 |
同位体組成が制御されたシリコン半導体中に,^<29>Si核スピン量子ビットを選択的に配置し,それらを量子ビットとして用いるための量子操作(特に,初期化とコヒーレンス時間の延長と読み出し)に関する基礎研究を多角的に実施した.分離されたシリコンを原子レベルの精度で堆積し,その極限として,シリコン上に^<29>Si核スピン量子ビットを一列に並べるための表面物理を解明し,実際にシリコン原子鎖の作製に成功した.また,シリコン中の^<29>Si核スピン量子ビットの初期化法として,光を用いる方法と電子スピン共鳴を用いる方法を提案し,実験において初期化のために必用なスピン物性を解明し,熱平衡状態における核スピン偏極と比較して,1000倍以上に高めることに成功した.さらに,核磁気共鳴装置中でラジオ波を照射することにより核スピン量子ビット間の双子相互作用を時間平均で打ち消すことに成功し,^<29>Si核スピンのコヒーレンス時間を温において25秒以上に伸ばすことに成功した.^<29>Si核スピン読み出しに関しても,光と電子磁気共鳴を用いる方法を提案した.ここでは^<29>Si核スピンの量子情報を近くに配置された^<31>P核スピンにスワップ操作によって移行したうえで,^<31>P核スピンを読み出す概念を提案し,実験においてアンサンブルではあるが,光のみで^<31>P核スピンを測定することに成功した.同様の手法は光電流を用いた核スピン読み出しにも用いられることを示した.電子磁気共鳴では,^<31>P核スピンとエンタングルしたリンに束縛された電子スピンの量子情報を読み出すことに成功した.
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