カーボンナノチューブ量子ドットを用いたスピン量子操作を行うために、1)磁場を印可したときの量子ドットのエネルギースペクトルの測定、2)スピン緩和時間の測定、3)ドットスピン状態を読みとるための予備的な実験として、2次元電子ガスを含むGaAs/AlGaAs基板上にカーポンナノチューブ量子ドットを作製するプロセスを開発した。以下に、それぞれについて研究実績の概要を示す。 1)金属的なカーボンナノチューブのクーロン振動を、大きなソースドレイン電圧を印可した状態で測定する、いわゆる励起スペクトル測定を磁場を印可した状態で行った。その結果、1電子量子準位のゼーマン分裂を観測することができた。このことは、電子数が奇数の場合に量子ビットが形成できたことを示している。 2)ゼーマン分裂した2準位系におけるスピン緩和時間を測定するために、ゲートにパルス電圧を印可する手法を用い、スピン緩和時間が少なくとも1マイクロ秒以上あることを明らかにした。この時間は、測定系のダイナミックレンジで決まっており、実際のスピン緩和時間はもっと長い。このことは、カーボンナノチューブ量子ドットをスピン型量子ビットとして利用することが有効であることを示している。 3)量子ドット中のスピンの状態を読み出すためには、スピンの状態を電荷の状態に変換し、電荷を読み出す手法が用いられると思われる。そのために、カーボンナノチューブ量子ドットの電荷状態をGaAs/AlGaAs2次元電子ガスに形成した量子ポイントコンタクトを用いることを提案した。その基礎実験として、GaAs/AlGaAs基板上にカーボンナノチューブ量子ドットを作る技術を確立した。
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