我々の研究グループでは、2000年に半導体・金属ハイブリッドグラニュラー構造において、室温、大気中の条件でも、数千%に及ぶ大きな磁気抵抗効果が観測されることを発見し、その現象を磁気抵抗スイッチ効果と名付けた。その後の研究によって、磁気抵抗効果の大きさは百万%を超える値にまで達成し、抵抗効果と言うよりは、磁場による金属-絶縁体転移ともとらえられるようになった。現在のところ、室温における磁気抵抗効果の大きさとしては最大の値である。 磁気抵抗スイッチ効果は、その非線形な電流-電圧特性が、磁場によって線形性を取り戻す効果であると見なすことが出来る。本研究課題では、この効果の起源を明らかにすることを目指す。平成14年度は、以下のような手順で研究を遂行することにした。 (1)磁気抵抗スイッチ効果を示す半導体・金属ハイブリッド構造の探索 (2)磁気抵抗スイッチ効果を示す、より簡単な構造の探索 (1)の個別研究により、磁気抵抗スイッチ効果の材料の特性に依存する部分が明らかになる。また、(2)の研究目標は、磁気抵抗スイッチ効果の構造機能相関を明らかにするところにある。これらの研究を通じて、磁気抵抗スイッチ効果の素過程を抽出することが可能になり、特性の制御の指針が得られると考えた。特性の制御が可能になれば、合目的的に半導体・金属ハイブリッド構造を物質設計することが可能となり、更には上記のモデル化も可能になると期待される。 以上の研究の結果、その結果、半絶縁性GaAs表面に金の電極からなるナノメートルスケールのギャップを作製した構造において、磁気抵抗スイッチ効果を観測することに成功した。
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