研究概要 |
X線発光スペクトル測定を行ったところ,溶質に依存する特性X線と制動輻射に基づくと思われる白色X線からなることが明らかとなった.白色成分の傾きから求めた電子温度は,励起光強度の増加に伴い2成分存在することが分かり,より高い電子温度の成分は励起光強度が増加に伴い著しく増加したものの,より低い電子温度の成分はその値がほとんど変化しなかった.同様の傾向が溶質濃度や溶質の原子番号の増加に対しても見られた.レーザープラズマ物理で得られている知見をもとに考察したところ,より低い電子温度の成分は逆制動輻射,より高い電子温度の成分は共鳴吸収によると考えられた. また遅延時間10nsを有するダブルパルスで励起したところ,X線発光強度がシングルパルスで励起した場合の10^3倍程度増強したことが明らかとなった.これに対して,第1励起光によるイオン化によって生成した溶媒和電子が効率よく第2励起光を吸収することが原因のひとつとして考えられた.この推論を実験的に検証するために,高強度励起条件下において時間分解吸収分光測定を行ったところ,溶媒和電子による吸収を明瞭に観測した. パルスX線の応用例のひとつとして,カセットテープをターゲットとして得られる鉄の特性X線パルスをプローブ光とするX線回折計を試作した.各種分光結晶を用いて回折像を撮影したところ,最高で13eVよりも高いエネルギー分解能を有するX線回折計を試作することに成功した. 次年度以降,より高い励起光強度で実験を行うために,レーザーシステムの改造を行った,その結果,従来0.8mJ/pulse程度であった光強度を1.9mJ/pulseまで増強することに成功した.
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