研究概要 |
X線発光強度のレーザーパルス幅およびチャープに対する依存性を明らかにし,パルス幅内におけるレーザーと水溶液との相互作用機構に関して議論した.またダブルパルスを励起光とする場合におけるX線発光強度の増加に関してより詳細な実験を行い,機構に関して議論した. パルス幅およびチャープを変化させてX線発光強度を測定したところ,p偏光励起ではネガティブチャープの時にX線発光強度が最高となった.X線発生に至る過程として多光子イオン化,逆制動輻射,共鳴吸収が考えられるが,パルス幅内で短波長から長波長へと変化するネガティブチャープでは,短波長の光により多光子吸収が効率よく誘起され,さらにはより高い振動数の電場によって効率よく逆制動輻射が誘起される.これらの過程によって電子密度が十分に増加し臨界密度に達したとき,長波長の光と相互作用して効率よい共鳴吸収が誘起されると考えられる.このようにネガティブチャープのレーザーでは各過程において効率よく光エネルギーが利用されるため,X線発光強度がより高くなったと結論した. ダブルパルス励起ではパルスの遅延時間の変化に応じてX線発光強度が増減を繰り返し,遅延時間14nsまでの間に4つのX線発光強度のピークが観測された.数ピコ秒までに観測される2つのピークは,メインパルスの正反射光強度が6倍程度まで増加したことから,プレパルスによってプラズマが生成したことに起因すると考えられた.一方数ナノ秒の時間領域で観測された2つのピークは,正反射光強度がより低くなったことから,アブレーションによる試料表面の荒れが誘起されていると考えられた.凹凸を有する試料表面においては,実効的なレーザー光の吸収率の増加,プラズマの閉じこめ効果,レーザー電場の局所的な増強が誘起されると考えられることから,こうした効果がX線発光強度の増加を誘起していると結論した.
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