研究概要 |
1.強レーザー場中の分子ダイナミクス (1)エタノール分子ダイナミクス 開発してきた時間依存断熱状態法を強レーザー場中のエタノール分子に適用し,選択解離に及ぼすC-O-H変角振動とC-O結合伸縮振動間の結合の効果を調べた。強レーザー場によって振動モード間の結合の様子が大きく変わりうることがわかった。強い光によってモード結合を変化させることが分子ダイナミクスを制御する上で重要な要素となっている。 (2)非解離性C_<60>多価カチオン生成の機構解明 C_<60>が近赤外高強度超短パルス(〜70fs)と相互作用すると,+12価までの安定なC_<60>多価親カチオンだけが生成すことがP.Corkumらによって報告された。まず,密度汎関数法による電子状態計算によって,+14価までの多価カチオン親分子が安定な分子構造を持つことを明らかにし,イオン化に伴ってカチオンが得る余剰分子振動エネルギーが極めて小さく,+12価まで解離が起こり難いことを示した。また,レーザー場から得るエネルギーは解離に使われていないことを示した。 2.反応制御理論の開発とその応用 (1)円錐交差系の量子最適制御 レチナールのシス・トランス光異性化は200fs程度の短時間で起こり,円錐交差を通した内部転換モデルによって半定量的に記述される。これに最適制御シミュレーションを適用し,超短高強度レーザーパルスを使うことで高効率に生成物異性体を得られることを示した。 (2)光制御分子モーター フェムト秒領域で回転できる光駆動モーターモデルを理論的に構築した。アルデヒド基を回転部位に持つキラル分子はそのキラル性から由来する非対称内部回転ポテンシャルを持つ。平面偏光UV光励起レーザーのポンプーダンプ型の照射による分子内回転の方向は電子励起状態でつくられた波束の運動方向によって決まる。本年は、アップチャープパルスに引き続いてダウンチャープパルスを照射すれば,平面偏光パルス入射によっても左右自在に回転させることが可能であることを示した。回転方向を左右に変えるためには2つのパルス間隔を制御すればよい。 (3)整形フェムト秒パルスを使った分子量子演算実験のための理論提案
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