研究概要 |
平成16年度は研究計画に基づき(1)広帯域波長変換によるサブ10fs,サブTW・TW光源の開発 (2)XUV領域における2光子超閾イオン化の観測 (3)アト秒パルスの発生と計測 (4)高次高調波を用いた固体光電子分光の研究において成果をあげた。以下に各項目毎にまとめる。 (1)では単一ミラーによる縮少系を用いたBFDでパルスフロント歪みが生じることを見出し、望遠鏡型(ミラー2個)に改良することにより、歪みのない10fs,10Hz,1TWの400nm光源を開発した(Kanai, Opt.Lett., 2004)。また更なる超短パルス化を計るため、基本波の広帯域化と可変ミラーによる位相補償を行い、基本波で15fs,2倍波で7.5fsを得た。(2)ではKrFの5次高調波を用いて希ガスの2光子超閾イオン化をXe,Ar,Heにおいて初めて観測した。(Miyamoto, PRL, 2004)(Nakajima, PRA, 2004)。チタンサファイアレーザーの18次高調波(28eV)でもTOF法により2光子超閾イオン化を観測しアト秒パルスの計測に使った(Sekikawa, Nature, 2004)。(3)では(1)で開発した8.3fsの400nm光をArに集光し、パルスの立ち上がりの非線形性とイオン化による波尾の切断により、9次高調波で950アト秒を得た。またこのパルス波形を(2)で述べた2光子超閾イオン化信号を用いた自己相関法で測定した(Sekikawa, Nature, 2004)。(4)ではチタンサファイレーザーの29次(45eV)と31次(48eV)をNaClに照射し、Na 2pの内殻励起にともなうオージェ電子を観測した。また狭帯域なNd:YVO_4の6次高調波(7eV)を用いて世界最高の光電子分光分解能(0.36meV)を達成し、CcRu_2やMgB_2の超伝導ギャップの構造を明らかにした(Kiss, PRL, 2005)。
|