高強度レーザー誘起硬X線パルスの高効率発生と応用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14077209
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 中村 一隆 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教授 (20302979)
• 研究分担者: 中野 秀俊 日本電信電話(株), NTT物性科学基礎研究所, 主幹研究官 ; 弘中 陽一郎 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助手 (20293061)
• キーワード: フェムト秒 / ピコ秒 / レーザー / 高エネルギー電子 / プラズマ / 時間分解 / X線 / イメージング

研究概要

本年度は、主としてX線パルス発生に密接に関連している高エネルギー電子のエネルギー分布測定とその時間分解測定への応用、比較的低強度のレーザーによるX線パルス発生の研究を行った。
高エネルギー電子測定と時間分解電子線イメージングでは、硬X線パルス発生の起因となる高エネルギー電子の発生・加速過程を調べるために、発生した電子のエネルギー分布を測定した。銅ターゲットを3.3x10^<17>W/cm^2で50fsのレーザー光を集光照射し、ターゲット表面側に発生する電子のエネルギーを磁場分離型エネルギー分析器により測定した。電子エネルギーは最大で800keVに達し、電子温度は低エネルギー側で100keV、高エネルギー側で230keVと求められた。また、入射レーザー強度や測定角度を変化させた実験から、10^<16>-10^<17>W/cm^2の範囲では電子加速においてポンデロモーティブ力以外の寄与(共鳴吸収効果等)が大きく効いていることが示唆された。さらに、この高エネルギー電子線を時間分解電子線イメージングに応用し、時々刻々と変化するレーザーアブレーション過程によるプラズマの膨張過程と電荷分離場をサブナノ秒の時間分解で測定することに成功した。
ピコ秒レーザー照射による特性X線発生では、パルス幅25psのレーザー光を空気中で銅ターゲット上に3x10^<13>W/cm^2で集光照射したX線CCDカメラを用いて、4-10keVの範囲でX線エネルギー測定を行い、8.04keVの特性X線が発生することを明らかにした。発生するX線フォトン数は4000phtons/4πsr/pulseと少ないが、小型のピコ秒レーザー用いた10TW/cm^2程度の強度で硬X線が発生することを初めて示した。この系では、発生したプラズマによるレーザー光の自己集束のための実行的なレーザー強度の上昇、または共鳴吸収過程による電子過熱が効いていることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] H.Kishimura, A.Yazaki, Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo: "Lattice deformation of laser-irradiated silicon crystal studied by picosecond X-ray diffraction"Appl.Surf.Sci.. 207. 314-317 (2003)
• [文献書誌] T.Nayuki, Y.Oishi, T.Fujii, K.Nemoto, T.Kayoiji, Y.Okano, Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo, K.Ueda: "Thin tape target driver for laser ion accelerator"Rev.Sci.Instru.. 74. 3293-3296 (2003)
• [文献書誌] Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo: "Ultrafast Time-Resolved X-ray Diffraction of Shock-Compressed Condensed Matter"New Diamond and Frontier Carbon Technology. 13. 161-170 (2003)
• [文献書誌] Y.Okano, Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo: "Time-resolved electron shadowgraphy for 300-ps laser ablation of a copper film"Appl.Phys.Lett.. 83. 1536-1538 (2003)
• [文献書誌] Y.Okano, Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo, Y.Oishi, T.Nayuki, K.Nemoto: "Energy Distribution of Electrons Ejected from a Copper Target in a Femtosecond Laser Field of 10^<17>W/cm^2"J.Appl.Phys.. 95. 2278 (2004)
• [文献書誌] T.Fujii, Y.Oishi, T.Nayuki, Y.Takizawa, K.Nemoto, T.Kayoiji, K.Horioka, Y.Okano, Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo: "MeV-order Proton and carbon ion acceleration by irradiation of 60-fs-TW-laser pulses on thin copper tape"Appl.Phys.Lett.. 83. 1524-1526 (2003)
• [文献書誌] 大石祐嗣, 名雪琢弥, 藤井隆, 滝沢靖史, 根元孝七, 山崎敏光, 通地努, 関谷智彦, 堀岡一彦, 岡野泰彬, 弘中陽一郎, 中村一隆, 近藤建一: "超短パルス超高強度レーザーを用いたプロトン生成とそのレーザー強度とパルス幅依存性"レーザー研究. 31. 747-751 (2003)
• [文献書誌] H.Nagao, Y.Hironaka, K.G.Nakamura, K.Kondo: "Hard X-ray generation from picosecond laser irradiated Cu film at 10^<13>W/cm^2"Jpn.J.Appl.Phys.. 43. 1207-1208 (2004)
• [文献書誌] 中村一隆, 広中陽一郎, 近藤建一: "レーザー生成X線による超高速パルスX線回折計測"O Plus E. 25巻9号. 1020-1024 (2003)
• [文献書誌] Y.Okano, Y.Hironaka, Y.Oishi, T.Nayuki, K.Nemoto, K.G.Nakamura, K.Kondo: "Fast electron and ion emission from metal targets in intense femtosecond laser fields"Ultrafast Phenomena XIII, eds.R.D.Miller, M.M.Maurnane, N.F.Scherer, and A.M.Weiner (Springer Series in Chemical Physics). 71. 105-107 (2003)