研究概要 |
高強度の超短光パルスが希ガスなどの原子媒質に照射されると、非線形相互作用によって高次高調波が発生する。これによって、非線形光学現象を誘起しうるだけの高強度の極端紫外光パルスの発生が可能になりつつある。最低次の非線形光学過程は2次であり、たとえば2光子超閾イオン化などが挙げられる。量子制御という観点からも、このような極端紫外波長域における高強度光源は大変興味のあるところであるが、残念ながら原子についてさえ極紫外波長域での応答は調べられていない。そこで本年度は、極端紫外光パルスによって誘起される希ガスの2光子超閾イオン化断面積の理論評価を摂動理論を用いて行った。この時問題となるのは、2光子目で起こる連続-連続遷移をどう取り扱うかである。一般によく使われるlength gaugeでは、動径方向の積分によって得られる双極子モーメントが収束しないという困難に突き当たる。ここでは打開策として、動径の小さなところ(<20原子単位)ではlength gaugeによって双極子モーメントを積分し、これより大きな動径についてはacceleration gaugeを使った積分を行うことによって収束の問題を克服した。こうしてAr, Xe原子について2光子超閾イオン化断面積を計算することに成功した。得られた結果は、最新の実験データとよい一致を示した。しかしながら、光電子の角度分布については我々の理論値と実験データには相違が見られた。原因としては、計算に用いた波動関数があまりよくないということが考えられるが、そもそも光電子の角度分布を計算できたということ自体がまず画期的であり、詳細についてはこれからよく調べる予定である。
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