研究概要 |
高強度フェムト秒レーザーによる,有機分子のイオン化では分子イオンの生成が有力になるが,それでも激しいフラグメント化起こす分子もある.本研究では非共鳴多光子イオン化において,「レーザー波長がカチオンの吸収と非共鳴の場合に分子イオンの生成が有力になる.」ことを明らかにした.フラグメント化を起こす原因は上述の1.励起波長のほか,2.パルス幅,3.電子の再衝突(偏光),が考えられる.これら三つのパラメーターを変化させ,有機分子のフラグメント化を左右する原因を詳しく調べた.また,分子の多価の親イオンが明瞭に観察された.多価イオン生成と分子の諸物性との相関を議論した. 分子イオン生成は微量分析装置に発展できる.ダイオキシン類をフェムト秒パルスでイオン化させ,分析への応用の可能性を示した.クーロン爆発ではC_6F_6の結果を解析した. 1.分子イオン/フラグメントイオン 1.1励起波長 アントラセンの場合,1.4μm励起では分子イオンイオンが見え,0.8μm励起ではフラグメントが多く見えた.アントアセンカチオンとの非共鳴のため(1.4μm励起)として説明できた. 1.2パルス幅依存性 2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン,1ps,300fs,35fsとパルス幅を変えて調べた.パルス幅が短い方が分子イオンの生成が大きくなった. 1.3.電子の再衝突 (直線 vs. 円偏光) 再衝突機構は多価イオン生成に大きな寄与はなく,フラグメント化については分子イオンとレーザー光との共鳴による分解機構に比べ,小さい寄与であった. 2.質量分析への応用の可能性 ダイオキシンのフェムト秒イオン化の実験を行い,微量分析に応用の可能性を示した.
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