研究概要 |
有機分子の高強度フェムト秒レーザー励起の実験は1995年DeWittらのイオン化に始まった.レーザーの照射強度が10^<13-14>Wcm^<-2>付近では分解しないでそのまま分子イオンを生成する現象が有力になった.それでも激しいフラグメント化を起こす分子もあった.以前に当グループは非共鳴多光子イオン化において,「レーザー波長がカチオンの吸収と非共鳴の場合に分子イオンの生成が有力になる.」ことを明らかにした.フラグメント化を起こす原因のパラメーターは上述の1.励起波長のほか,2.電子の再衝突(偏光),3.パルス幅,等が考えられる.これらを変化させ,有機分子のフラグメント化を左右する原因を詳しく調べてきた.今年度は電子の再衝突の影響,つまり,励起レーザーの偏光特性について特に詳しく調べた.分子イオン生成は微量分析装置に発展できる.クーロン爆発についてはC_6F_6の結果をまとめ[10],イオン化の実験の際に見られる爆発の結果を解析した. 1.電子再衝突の影響 ナフタレンの1.4μm励起では分子イオンが主に生成する.したがってフラグメントイオンの少ない条件で偏光の影響を調べることができた.2価のイオンの生成は電子再衝突によると思われる増大を示した.フラグメントイオンについては再衝突の影響は見られなかった. 2.アントラセン,0.8μm励起では円偏光励起でフラグメントイオンが増大した. 励起光,0.8μm,はアントラセンカチオンと共鳴できる波長である.遷移モーメントとの関係で,円偏光の方がカチオンとのマッチングがよいため,として偏光依存性を説明した. 3.パルス幅依存性 サブテンフェムト秒パルス励起ではカチオンと共鳴波長であっても,分子イオンを生成できる可能性がある.パルス幅依存性については2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン,シクロヘキサンで1000-15fsの範囲で調べた.短パルス励起の方が,フラグメントイオン生成を抑えられた.
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