研究課題
主な研究成果は以下の通り。1.有限温度場に起因するドレスト状態の制御:これまでの研究で量子ゼノン効果を用いてデコヒーレンス制御を行う場合、制御振動数が十分大きくないとかえって制御効率が下がることが明らかにされた。他方、量子ゼノン効果を初めて検証した実験では、1回の観測でも状態の時間発展に大きな影響を及ぼすことが示されている。これから、制御対象のダイナミックスの違いにより量子ゼノン制御の効率が変わることが予想される。そこで、2つの素過程が引き続くことで生じる緩和過程(量子ドットの基底状態におけるスピン緩和)についてゼノン制御の効率を調べた。その結果、制御振動数が十分でないとかえって緩和を促進するという一般的傾向が見られるものの、これまで調べた系に比べ悪化の度合いは小さく、制御を達成するのに必要な制御振動数も小さいことが見出された。2.古典カオス系の非平衡状態:カオス研究では非双曲力学系と呼ばれる系の研究が次の重要な課題である。区分的線形な間欠的カオス写像で通常拡散より遅い異常拡散を示す写像について、分布の時間発展を記述するFP演算子のスペクトルと輸送現象の関係を調べ、後者が1に近い第2リーマン面内の固有値に支配されていることを明らかにした。この数学的特徴は量子不安定状態に類似しており、興味深い。3.量子系の非平衡状態:これまで量子1次元導体、L1漸近可換系の非平衡定常状態をC^*代数の方法で調べ、その特徴づけを行ってきた。本研究では、その結果得られた知見を用い、非平衡状態を記述する新たな平均場近似法を構築し、スレイブ・ボソン法と組み合わせて量子複合系の伝導現象を解析した。その結果、線形応答領域では同系の解析で最も信頼されているNRG法の結果を再現し、さらに、非線形応答領域における最新の実験事実を説明することに成功した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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