研究概要 |
平成14-16年度の間、高周期14族元素多重結合をもつ新しい骨格の化合物を創製し、その動的錯体としての構造、物性および反応性の特徴を明らかにし、制御することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。形式的なsp-ケイ素を有する化合物として初めて、アレンのケイ素類縁体であるトリシラアレンを創出することに成功し、さらに、ケイ素とゲルマニウムの一連の混合アレンとして、トリゲルマアレン、1,3-ジゲルマシラアレンおよび1,3-ジシラゲルマアレンの合成に成功し、構造を比較検討した。これらはいずれも折れ曲がった骨格を持つことがわかった。トリシラアレンでは、中央のケイ素は両端のケイ素を通る軸の周りで回転するような動的挙動が、結晶中でも溶液中でも見出されたが、結晶中の動的ディスオーダーはトリゲルマアレンや1,3-ジゲルマアレンでは観察されなかった。この動的ディスオーダーは末端元素の折れ曲がりの程度と相関のあることを発見した。すなわち、末端不飽和元素がゲルマニウムの場合にはその周りでの折れ曲がりの程度がケイ素の場合より大きく、両端の置換基を含む二つの面で区切られる4つの象限の環境に顕著な差異を生じ、中央の元素は一つの象限に優先的に位置するためであるとの結論を得た。また、我々の開発した安定シリレンを前駆体として、熱的に安定なケイ素-カルコーゲン二重結合化合物(シランチオン、シランセロン、シランテロン)の合成に成功した。X線構造解析により、これらの化合物のπ π*およびn π*遷移のカルコゲン元素依存性が明らかになった。さらに、安定なジシレン-遷移金属錯体の合成、構造および反応の研究の一環として、新しいジシレン配位パラジウム14電子錯体の合成に成功した。X線構造解析等により、この錯体のジシレンはπ配位性の高いことが明らかになった。
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