高周期14族元素カチオン性多中心錯体の合成と機能

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14078204
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 関口 章 筑波大学, 化学系, 教授 (90143164)
• キーワード: 高周期14族元素 / 高周期14族元素ラジカル種 / 高周期14族元素カチオン種

研究概要

昨年度までに得られたπ共役を活用することで安定化した環状高周期14族元素カチオン種、ラジカル種に関するこれまで筆者らの知見を基に、π共役安定化の無い非環状高周期14族元素カチオン種およびラジカル種の系統的合成を検討した。嵩高いジ-tert-ブチルメチルシリル基の置換した高周期14族元素2価化合物へのジ-tert-ブチルメチルシリルナトリウム種の付加を鍵反応として得られるトリス(ジ-tert-ブチルメチルシリル)置換高周期14族元素ナトリウム種の1電子酸化により、非局在化による安定化のない高周期14族元素ラジカル種を合成、単離することに成功した。
さらに、得られたトリス(ジ-tert-ブチルメチルシリル)ゲルミル及びスタンニルラジカル種の1電子酸化により対応するフリーなゲルマニウム及びスズカチオン種に変換することに成功し、そのX線結晶構造解析により平面3配位構造を有するフリーなカチオン種であることを明らかにした。一方、トリス(ジ-tert-ブチルメチルシリル)シリルラジカル種の一電子酸化で生じるシリルカチオン種はフリーな化学種として安定に合成、単離することは出来ないが、アセトニトリル共存下における合成反応によりアセトニトリル錯体として得ることに成功した。
また、トリス(ジ-tert-ブチルメチルシリル)置換シリルラジカル種を炭化水素中でリチウムと反応させて得られるシリルリチウム種において、リチウムとtert-ブチル基内のC-H結合間にアゴスティック相互作用を持つ特異な構造をとっていることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Akira Sekiguchi: "Bis(tri-tert-butylsilyl)silylene : Triplet Ground State Silylene"Journal of the American Chemical Society. 125・17. 4962-4963 (2003)
• [文献書誌] Vladimir Ya.Lee: "A Chemical Trick : How to Make a Digermene from a Disilene, Formation of ^3D-1,2,3,4-Disiladigermetene"Journal of the American Chemical Society. 125・20. 9252-9253 (2003)
• [文献書誌] Akira Sekiguchi: "Tin-Centered Radical and Cation : Stable and Free"Journal of the American Chemical Society. 125・31. 9250-9251 (2003)
• [文献書誌] Yutaka Ishida: "1,4,5-Trigermabicyclo[2.1.0]pent-2-en-5-ylium : The Isolable Bishomocyclopropenylium Ion Containing Heavier Group 14 Element."Journal of the American Chemical Society. 125・38. 11468-11469 (2003)
• [文献書誌] Akira Sekiguchi: "Tetrahedranyllithium : Synthesis, Characterization, and Reactivity"Journal of the American Chemical Society. 125・42. 12684-12685 (2003)
• [文献書誌] Masaaki Ichinohe: "Tetrasilatetrahedranide : The First Silicon Cage Anion"Journal of the American Chemical Society. 125・44. 13328-13329 (2003)